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CRMは、愛の構造化である~ 顧客関係性という幻想を超え、“関係の設計”に挑む

CRMは、愛の構造化である。

――顧客関係性という幻想を超え、“関係の設計”に挑む

第1章:CRMとは何か?という問いを一度忘れよう

「CRM=顧客管理システム」「CRM=リピーター戦略」「CRM=LINEやメールによる追客活動」

よく語られるCRMの定義は、どれも“間違ってはいない”。

でも、私はあえてここでこう言いたい。
「CRMという言葉は、マーケティングの言語として、もう一度解体されるべきである。」

なぜなら、現代のCRMは、「管理の論理」に陥っているからだ。

第2章:管理は「把握」だが、設計は「意味づけ」である

顧客を管理する。属性をラベリングする。行動を記録し、セグメントを切り、シナリオを設計する。

それは便利だ。効率的だ。でも、そこに「関係性」はあるだろうか?

“この人は過去に2回購入していて、最近はメールの開封がないから、Aセグメントに分類しておこう。”

この発想に潜んでいるのは、
「顧客=パターンで管理できる存在」という構造認知である。

CRMとは、「どう売るか」ではなく、「どう在るか」の問題である。

第3章:CRMを“愛”と捉えるマーケティング視座

一見、センチメンタルに聞こえるかもしれない。でも私は本気でこう考えている。

CRMとは、「人と人の関係性を、構造的に維持・進化させていく営み」である。
つまり、“愛の構造化”である。

愛とは、何か特別なことをすることではない。ただ、その人のことを「考え続けること」だ。

CRMとは、「考え続けることの構造化」であり、それが、唯一、顧客との“関係性”をつなぎ続ける方法だと、私は思っている。

第4章:CRMが機能しない理由は「顧客を忘れる」から

多くのCRM施策が形骸化するのは、「形式としてやっているから」である。

  • 誕生日にクーポンを送る
  • 定期的にLINEでキャンペーン告知をする
  • 購入後1週間でリピート導線を送る

これらは、“自動化”という仮面をかぶった忘却である。

CRMが意味を持つのは、「この人を忘れていない」ということが、相手に届くときだけである。

第5章:リアルな事例① 美容サロンの「CRMをやめたCRM」

都内で展開している小規模美容サロン。CRMツールやメルマガ配信を導入していたが、反応率は年々低下。

そこでオーナーが下した決断は、「一旦CRMをやめる」というもの。

  • 顧客リストを印刷し、手書きでノートに書き写す
  • 施術中の会話メモをスタッフ全員で共有
  • クーポン配信をやめ、1対1のおすすめメッセージを送る
  • 毎週1人の顧客について「何を大切にしてるか」を議論

結果、半年で売上は約2倍に。クレーム・キャンセル率も激減。

CRMツールをやめたのではない。「人を考える営み」を取り戻したのだ。

第6章:リアルな事例② ECでのLINE運用の革命

ManyCが支援するEC事業者。LINEの登録者は多いが、開封率・クリック率が低迷。

一般的な改善策を使わず、私たちが選んだのは「関係性の物語」を語るCRM

  • 「最初にお伝えしたいこと」から始まるLINE
  • 「1ヶ月経って不満があるなら教えてください」
  • 「再購入でなくても、あなたの声を聞きたい」

その結果、開封率1.5倍・返信率8倍に。顧客の声が変わった。

「こんなLINEが届くと思ってなかった」
「このブランドにはちゃんと“人”がいる」

第7章:CRM設計に必要な“5つの問い”

No. 問い 意図
この顧客は、今どんな物語の中にいるか? 行動だけでなく、背景の解釈へ
私たちは、その物語のどこに立っているか? 介入者か、共鳴者か、傍観者か
どんな言葉で関係性を築けるか? キャンペーンではなく、対話としての言語設計
忘れられていないと顧客に感じてもらえているか? 「存在を想起されている感覚」がCRMの核心
この施策は“誰が・なぜ”考えたものか? 想いが宿っているか?

第8章:CRMは“設計された感情”である

CRMとは、「設計された感情の再現性」である。

人がまた買いたくなる理由は、便利さや価格ではない。
「自分が“見られている”という感覚があるから」だ。

第9章:ManyCは、CRMを“意味の構造”として再設計する

私たちは、CRMを「ツール」ではなく「構造」として捉える。

  • シナリオ=物語構造で設計する
  • 配信=対話として設計する
  • データ=意味解釈の素材として活かす

つまり、CRMとは“技術”ではなく、
顧客の存在をどう捉えるかという思想設計なのだ。

第10章:CRMの未来は、“人間関係性の再構築”である

今、多くのブランドが「お客様とつながりたい」と願っている。

しかし、それが「配信ツール」で止まってしまうのは、CRMを“関係性の装置”として捉えていないからだ。

CRMとは、顧客の行動を追うのではなく、
「忘れられないという想起の循環」をつくる営みである。

【ManyCの視点】

ManyCは、「なぜその構造で顧客と関係を結ぶのか?」を共に考えるパートナーです。

信じているのは、“売る”より“関係する”マーケティング。
その先に、CVRやLTVでは測れない、“ブランドの共鳴”があると確信しています。

【あとがき】

CRMという言葉を一度忘れてみよう。

そして、「この人とどう関係を築きたいか?」から始めてみよう。

CRMは、愛だ。
愛とは、忘れないことだ。
そしてその「忘れない」を、構造として設計すること。
それが、マーケティングの未来だと、私は思っている。

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