
――顧客関係性という幻想を超え、“関係の設計”に挑む
「CRM=顧客管理システム」「CRM=リピーター戦略」「CRM=LINEやメールによる追客活動」
よく語られるCRMの定義は、どれも“間違ってはいない”。
でも、私はあえてここでこう言いたい。
「CRMという言葉は、マーケティングの言語として、もう一度解体されるべきである。」
なぜなら、現代のCRMは、「管理の論理」に陥っているからだ。
顧客を管理する。属性をラベリングする。行動を記録し、セグメントを切り、シナリオを設計する。
それは便利だ。効率的だ。でも、そこに「関係性」はあるだろうか?
“この人は過去に2回購入していて、最近はメールの開封がないから、Aセグメントに分類しておこう。”
この発想に潜んでいるのは、
「顧客=パターンで管理できる存在」という構造認知である。
CRMとは、「どう売るか」ではなく、「どう在るか」の問題である。
一見、センチメンタルに聞こえるかもしれない。でも私は本気でこう考えている。
CRMとは、「人と人の関係性を、構造的に維持・進化させていく営み」である。
つまり、“愛の構造化”である。
愛とは、何か特別なことをすることではない。ただ、その人のことを「考え続けること」だ。
CRMとは、「考え続けることの構造化」であり、それが、唯一、顧客との“関係性”をつなぎ続ける方法だと、私は思っている。
多くのCRM施策が形骸化するのは、「形式としてやっているから」である。
これらは、“自動化”という仮面をかぶった忘却である。
CRMが意味を持つのは、「この人を忘れていない」ということが、相手に届くときだけである。
都内で展開している小規模美容サロン。CRMツールやメルマガ配信を導入していたが、反応率は年々低下。
そこでオーナーが下した決断は、「一旦CRMをやめる」というもの。
結果、半年で売上は約2倍に。クレーム・キャンセル率も激減。
CRMツールをやめたのではない。「人を考える営み」を取り戻したのだ。
ManyCが支援するEC事業者。LINEの登録者は多いが、開封率・クリック率が低迷。
一般的な改善策を使わず、私たちが選んだのは「関係性の物語」を語るCRM。
その結果、開封率1.5倍・返信率8倍に。顧客の声が変わった。
「こんなLINEが届くと思ってなかった」
「このブランドにはちゃんと“人”がいる」
No. | 問い | 意図 |
---|---|---|
① | この顧客は、今どんな物語の中にいるか? | 行動だけでなく、背景の解釈へ |
② | 私たちは、その物語のどこに立っているか? | 介入者か、共鳴者か、傍観者か |
③ | どんな言葉で関係性を築けるか? | キャンペーンではなく、対話としての言語設計 |
④ | 忘れられていないと顧客に感じてもらえているか? | 「存在を想起されている感覚」がCRMの核心 |
⑤ | この施策は“誰が・なぜ”考えたものか? | 想いが宿っているか? |
CRMとは、「設計された感情の再現性」である。
人がまた買いたくなる理由は、便利さや価格ではない。
「自分が“見られている”という感覚があるから」だ。
私たちは、CRMを「ツール」ではなく「構造」として捉える。
つまり、CRMとは“技術”ではなく、
顧客の存在をどう捉えるかという思想設計なのだ。
今、多くのブランドが「お客様とつながりたい」と願っている。
しかし、それが「配信ツール」で止まってしまうのは、CRMを“関係性の装置”として捉えていないからだ。
CRMとは、顧客の行動を追うのではなく、
「忘れられないという想起の循環」をつくる営みである。
ManyCは、「なぜその構造で顧客と関係を結ぶのか?」を共に考えるパートナーです。
信じているのは、“売る”より“関係する”マーケティング。
その先に、CVRやLTVでは測れない、“ブランドの共鳴”があると確信しています。
CRMという言葉を一度忘れてみよう。
そして、「この人とどう関係を築きたいか?」から始めてみよう。
CRMは、愛だ。
愛とは、忘れないことだ。
そしてその「忘れない」を、構造として設計すること。
それが、マーケティングの未来だと、私は思っている。